開院への想い


ずっと続くあたたかい場所に

岩崎八千代 やちよ助産院

 はじめまして、岩崎八千代と申します。今年の4月に神奈川県小田原市栢山に2床の小さな助産院「やちよ助産院」を開院しました。助産院ですが、お産はせず、入院での産後ケアを中心に授乳支援、産前産後のことや子育ての相談など、仲間と一緒に活動していきます。夫の応援もあり、私たち夫婦にとって助産院は第4子のような存在ですかね。上の子たち同様、いろいろな人にかわいがられてすくすくと育っていってほしいものです。

 助産院を開院したいという想いはずーっとあたためていました。自分たちの子育てもありましたし、もちろん資金のこともあり、「いつかは・・・・」と夢を膨らませていました。この10年は開業届を出し、訪問での乳房ケア・授乳相談を行いながら、市や町の育児相談やマタニティ講師、看護学校講師など、地域のなかで助産師としてできることはなんでもやってきました。

 お産の援助も当直パートという形ですがクリニックで続けています。「お産おしゃべりクラブ」という活動も10年目を迎えました。また、5年前より仲間の助産師と「いのちの大切さを伝える助産師の会」をつくり、小学校などでいのちの話もしています。

「お産おしゃべりクラブ」とは

 私のライフワークの一つ、「お産おしゃべりクラブ」を紹介します。なんだろう?と思われますよね。これは「妊娠・出産・子育てのことなどみんなでおしゃべりしませんか?」というおしゃべり会です。初めての妊娠で不安な方も、赤ちゃん連れのママさんも、妊娠前の方や大先輩ママさんも、どなたでも参加できる会です。現在は月1回、小田原市の子育て支援センターで開催しています。代表の府川さんは一般のお母さんですが、お母さんたちへの想いのあたたかい方で、その想いに共感し一緒に続けています。

 みなさんの周りにも、結婚して引っ越してきた、夫の転勤で、実家は遠方で、といった事情を抱えた人がいると思います。妊娠中から子育てをしていく場所で、知り合いができ、相談場所を知っていると安心の材料が増えますよね。初めて参加した妊婦さんが「陣痛って耐えられるか心配」と話すと、経験者がいろいろお話してくれます。自由にいろいろ聞けるのがいいのだと思います。時には数年前、いえ、もっと前に出産した人も、昨日のことのように話してくれます。私はたまにフォローもしますが、もっぱら聞き役です。

 出産はその人にとってやはり忘れることのない特別な経験で、それを共有できることで、いろいろ作用していますし、人とのいいつながりも生まれています。侮るなかれ、おしゃべりの力。私もたくさんの気づきを与えてもらっています。

 助産師のみなさん、各地にある子育てひろばにもっと押しかけて、妊婦さんを誘ってお産の話をしてみませんか。

 

赤ちゃんと安心して過ごせる場所を

 さて話は変わりますが、ここ小田原周辺も産科が減り、出産ができる場所が限られてきており、里帰り分娩の受け入れ制限も行われるようになりました。こちらに実家のある小さな上の子を抱えた経産婦さんは、どうしているのでしょうか。みなさんのところはどうですか?

 新生児訪問等で回っていると、近くに産後のお手伝いのいる人ばかりではないですし、それぞれの家庭の事情もあり、産む人の選択肢が減るのはやはり心配です。安心して出産できる場所の確保は第一だと思います。

 「やちよ助産院」はお母さんに安心して過ごしてもらい、産後の身体を整えながら赤ちゃんとの生活のリズムをなんとなくつかんでもらう場所です。産後の養生は大切ですよね。おいしく身体にやさしいごはんを食べてもらいたいです。「食」は大切にしていきたいし、伝えていきたいことの一つです。NHKドラマ「つるかめ助産院」のみんなで食事する場面、好きだなあ。いろいろおしゃべりしながら、美味しいねってほかの人と一緒に食べて、ほっと気持ちのゆるむ時間を持っていただけるよう寄り添っていきたいです。

 ここに来れば誰かがいるという場所。たくさんの人が集まって、お産や子育ての知恵が次の人たちに、そのまた次の人たちにと、ずっとずっと伝えられていく場所になれたら、うれしいです。両親からつけてもらった八千代の名から「やちよ助産院」このためにつけられたのかと思うくらい、ぴったりかも。これからの成長が楽しみです。

JosanZasshi vol.69 no.06 june P532-533より引用